【ウマ娘】駿川たづな怪文書シリーズ「俺の初めての担当?」

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【ウマ娘】駿川たづな怪文書シリーズ「俺の初めての担当?」
うますたぐらむのトレーナー
「俺の初めての担当?」
担当ウマ娘のトレーニングを終えての一息。夕日が赤く差し込む中で、担当から飛んできたのはそんな質問だった
「はい。トレーナーさんが昔から何人もウマ娘を担当してきたベテランだっていうのはずっと前に聞いてましたけど……その、トレーナーとして初めて担当したウマ娘って、どんな子、いえどんな人だったんですか?」
確かに、それなりに長い事トレーナーという仕事を続けてきて担当してきたウマ娘達も数多くいる。その誰もが、名前も経歴も忘れ得ぬ大切なもので誇りなのは間違いない
もちろん覚えている。自分がトレーナーという肩書を得て、初めて見初め、惚れこんでスカウトしたウマ娘のことを誰が忘れるものか
なによりそんな記念すべき思い出は、今でも色褪せることのない自分の中での勲章なのだ。語れと言われれば、その気になれば何時間でも語り続けることができる
しかし。
うますたぐらむのトレーナー
「……さあなぁ。なにせ随分昔のことだし」
「あ、これ話してくれないやつですね?」
この質問が飛んでくるのも初めてではないが、毎度毎度適当にはぐらかして終わっていた
隠したい訳じゃない。ただ、それには少しばかり事情があるだけだ
「その、可愛い子でした?」
「そりゃお前。可愛くない担当なんて今まで一人もいねえよ」
「いつか夜道で刺されちゃえです」
うますたぐらむのトレーナー
本当の事だ。嘘なんか言うか。あとお前もだぞとは言う必要もなさそうだ、尻尾めっちゃ揺れてるし
しかし、可愛いやつだったのは事実なのだが……久しぶりに。本当に久しぶりに、ほんの少しだけ話してみたい気持ちが出てくる
今目の前の自分の担当のメンタルの調整とか、そういう打算抜きで
ちょっとだけ、自慢したい。そんな年甲斐もない、オッサンの子供心が
「……可愛いやつではあったが。同じくらいに強情な……というか、頑固で大変な奴だった」
「が、頑固ですか?」
「無理すんなつってもまだやれるの一点張り。今の俺なら絶対止めてるが、あいつはそれで走り続けちまって。なおかつ結果出すもんだから始末に負えなかった。知る限り、一等の意地っ張りだ」
うますたぐらむのトレーナー
ウマ娘として……というか。そもそも競争競技に出るにあたって大きなハンデとなる足の問題を抱えながらも、その素質は正直な話をすれば自身の正気を疑うほどのものだった
周囲がそれにあてられて熱病のように活気づいてしまったのも後押ししたのは事実だ。しかしそれ以上に、アイツは………本当に。走りたい、というウマ娘の本能を極限まで煮詰めたかのようなもので
とてもじゃないが、当時駆け出しのトレーナーが制止できるようなものじゃなかった
「お前はそんなことするんじゃねえぞ?変だと思ったらすぐ言え。応急処置紛いの対処で走り続けても、その後に待ってるものは悪夢だけだぞ」
「……怪我、しちゃったんですか?」
「ああ。……止められなかった」
うますたぐらむのトレーナー
結局。
その幕引きは、競争選手として致命的な負傷による……強制的なバッドエンド
悔いた。誰より悔いた。せめて、誰か俺を殴りつけてくれとも思った。しかし彼女をレースの世界から失った悲しみは、自分のような若造一匹に視線を向ける事など無く
責任を問われることすらされない、求める罰も与えられないことがどれほどの地獄か。それを、今でも臓腑の底にまで刻み付けられている
だから今の自分がある。違和感一つ覚えたらすぐ報告しろと徹底して、未来を削り落とす可能性の一つまで逃さぬようにとなった今の自分が
「頼むから、目の前で倒れ込む担当を二度と見せてくれるな」
……いかん、喋り過ぎた。こいつがその気になれば、今の情報だけで過去の記録をほじくり返してそれに辿りつくのも難しくないだろう
自分はそれでもいいが……怒られる、だけじゃ済まなそうだ
うますたぐらむのトレーナー
「ま、そういうことだ。オッサンの昔話聞くのもいいが、クールダウン終わったら早く戻ってシャワー浴びて休め。明日は一日オフだから、絶対勝手な自主トレとかするなよ」
「あの、最後に一つだけ、いいですか」
……強制終了しようとしたが、食い下がられる。最後に一つ、というが。その質問によっては……また、ごまかしの言葉を捻りだす必要がある
いっそ、アイツの話を真に受けるなと言われるような法螺吹きで通せばよかったかも、なんて考えて
その言葉を聞いた時は……駄目だった
「その人、強かったですか?」
心が、体が、震えて。嘘を絶対に許さなかった
うますたぐらむのトレーナー
「………強かった」
「そうですか」
「強すぎるくらいに、強かった」
「忘れられないくらい、強かったんですね」
「忘れられないくらい、強かった」
この問いだけは。何があっても。どんな状況でも。どんな立場に立たされても
絶対に嘘偽りを吐くことが許されない
それほどに、自分にとって大事なものだから
「………生涯無敗」
「え?」
「なんでもねーよ」
うますたぐらむのトレーナー
ぼそっと。ウマ娘の優れた聴覚でも聞き取れないほどに小さい言葉で、呟いて
「じゃ、明日はゆっくりと休めよ。何かあったらすぐ連絡しろ」
「あ、はい………なんか上手い事誤魔化された気がしますけど」
じとっとした目を向けるんじゃありません。歳食った人間にはそれなりにあれこれあるんです、なんて
「お望みなら全部聞かせてやるぞ」
「え、本当ですか!?」
「ただどれだけ短く見積もっても10時間コースだから準備はしとけ」
「帰って休んでコンディション整えますね!!!!!」
うますたぐらむのトレーナー
そうだ、それでいい。じゃないと本当に10時間、どころか三日はその話で埋め尽くしてやるぞと
マッサージする時にちょっと痛いとピーピー半泣きで抗議してきたこととか、拗ねると無言で脇腹グリグリ押してきたりしたとか
蹄鉄選びたいって聞いてたのに他の買い物までつき合わされて一日潰れたこととか、尻尾の毛艶褒めたらセクハラ呼ばわりしてチョップしてきたこととか
無敗っていう誰より自分に重く圧し掛かるプレッシャーで、誰よりも繊細にそれを受け止めて夜中に呼び出してきたこととか
勝利を挙げた瞬間、どうやって見つけたんだってくらい早くこっちを見て手を振ってきたこととか
「じゃ、いい休日を」
「はい!!!お疲れ様です!!!」
ぺこりと深く元気よく頭を下げて小走りで立ち去る担当を見届けて、地鳴りでもするんじゃないかってくらいのドでかいため息
言葉を必死に選び続けて心底疲れてしまった。最後の質問、あれが想定していた一番ヤバいものじゃなくてよかったと、腹の底から安堵する
うますたぐらむのトレーナー
「……その子今何してるんですか、なんて言われたら……なぁ」
なにより、ここからもっと疲れることが待ち構えているのだ
話してる途中、目に入った夕焼けの中でも特徴的なその目に優しい色彩と、夕日のせいじゃないと断言できる真っ赤な顔
気付いた時にはもう遅かった。だから、下手に中断して不自然にするよりも話を続けてたのだが……
これは、相当お冠だ
「………もう現役じゃねえってのに」
今もこうして、ケアしなきゃならんとはと
髭を撫でて立ち上がり、その足を校庭から校舎へと……その人影が、早くこっちに来いと変な念でも飛ばしてそうな場所へと重苦しく向けなければいけなかった
うますたぐらむのトレーナー
●
「お疲れ様です」
白々しい。心底白々しい。自分でも何一つ擁護できない程白々しい。そんなテンプレートな挨拶
それを投げかけた相手は言葉を返してこない。ただ、その顔を真っ赤に染め上げたままプルプルと震えて、視線に強烈な抗議を乗せてくるだけだ
ああ、はい。そうだったなと。昔から、お前はそうやって拗ねたよなと
「………私、頑固じゃないです」
「いや頑固だよ」
うますたぐらむのトレーナー
もう半泣きじゃないかと。別にお前を虐めるつもりじゃなかったよと
鮮やかな緑の事務服に、同色の帽子。いつも学内で見慣れたその姿
しかし中身は今、誰も見たことがないであろう……いやあの理事長は知ってるか?それと、あのやたら仲のいいスポーツカー娘は
そんな、まるで不貞腐れた子供のような幼い怒気に満ちていて
「意地っ張りなんかじゃないです」
「最強の意地っ張りだよ」
今でも何言っても聞かないじゃないか、と
スッと。帽子を手にかけた彼女を……
うますたぐらむのトレーナー
「いじわる。昔っからそう。ずっと、いじわるです」
駿川たづなを見て、笑うしかない
「トレーナーさんの、いじわる」
ピコンッと
遠いあの日から見慣れた、最近あんまり見せてくれないその耳を、可愛らしくへちょっと垂れさせた彼女
ご機嫌取りは、ずいぶん時間がかかりそうだ
「……悪かったって。飯、食いに行くか。久々に、お前の行きたい店で」
「いっぱい食べてやります。お財布寒くしちゃいますから。デビュー戦の後みたいなことにしちゃいますから」
「そりゃ勘弁してくれ。あの後大変だったんだぞ」
うますたぐらむのトレーナー
ほんと、根っこの部分は、芯の部分は愉快なほどに変わらない
あの日惚れこんで、誰にも渡すものかと若さを燃やして駆けつけて口説いたあの日のままで
頑固で意地っ張りでわがままで、すぐ拗ねる。こうして誰もいなければ、こんな子供のころに戻ってしまう
「鞄取ってくる。車回すから待ってろよ」
「明日担当の子オフですよね?お酒、付き合ってもらいますから。許しません。絶対許しません」
「マジか」
「酔い潰れても許しません。いつまでも子供扱いする人なんて許しません」
隠してるから見えないけど、どうせ滅茶苦茶揺れ動いてるだろうあの綺麗な尻尾を想像して、笑みが増す
お前はいつまでたっても、手のかかる奴だよなと







うますたぐらむのトレーナー
「断ったら担当の子に全部ばらしますから」
「脅迫じゃねえか。いいよ、好きな店連れてってやるから」
なあ、俺の愛バ
「じゃ、ちょっと待ってろ。 ミノル」
「はい。 逃がしませんから」
ベーッと。舌を出して露骨に拗ねた、そのくせ楽しそうな顔が夕日と羞恥で真っ赤に染まる
そろそろ耳隠しておけよ、なんて軽口叩いて歩き出す
とっくに大人になって、酒を飲む姿まで見せてるくせに
俺の栄光は、まだまだ子供みたいな顔を見せてくれた
うますたぐらむのトレーナー
以上。今日酒飲めなくて辛いので結構前に書いてお蔵入りにしてたの出してみた
うますたぐらむのトレーナー
大人同士なのに甘酸っぱくしやがってよ…
好き…
うますたぐらむのトレーナー
しっとり大人の恋愛模様と見せかけてまだちょっぴり少女なミノルさんいいね…
うますたぐらむのトレーナー
たづなさんかわいいでしか得られない寿命がある
うますたぐらむのトレーナー
もし現担当の子がその気になって調べたらすごい顔しそう
うますたぐらむのトレーナー
>もし現担当の子がその気になって調べたらすごい顔しそう
トキノミノルの引退後はようとして知れないんだ
うますたぐらむのトレーナー
心の裡で(まあトレーナーさんの生涯無敗は私だけなんですけどね)って思ってそう
うますたぐらむのトレーナー
チョベリグだけどお互い歳考えてハッキリした方がいいんじゃないかしら?
うますたぐらむのトレーナー
>チョベリグだけどお互い歳考えてハッキリした方がいいんじゃないかしら?
(歳考えてって言葉が耳に入った瞬間始まるタイマンレース)
うますたぐらむのトレーナー
引退後にトレセンに勤め始めた元担当と一緒にお酒飲める歳まで付き合い続いてるって素敵だと思うの
うますたぐらむのトレーナー
アラサーの後半のほうに入る感じのたづなさんと
初老まではいかないけど壮年というにはちょっとしなびた感じのトレーナーを幻想した
うますたぐらむのトレーナー
激マブの全力と対等以上に疾走する謎の黄緑色の都市伝説
うますたぐらむのトレーナー
自分のたった一人の担当トレーナーさんの前でだけすぐに拗ねてむくれて子供っぽくワガママになるたづなさんは強いエネルギーを保有しています
それは健康にいいという研究結果も出ています
うますたぐらむのトレーナー
たづなさんにも全力で甘えられる相手がいてもいいじゃないか
引用元:https://www.2chan.net/
agunesu_dezital